口に出せば願いが叶う?

「思ったことって、口にする方がいいよね!」
「願いが叶うとか、そういうの?」
スターバックスラテのアイスを飲んでいると、隣の席でフラペチーノを飲んでいた女子大生二人の話に耳が傾いた。
「うん。たとえば、テストで良い点が取れていますように、とかさ」
「それは、テストが終わってから? それとも始まる前?」
問いかけた女子大生の言葉に「そりゃ、絶対終わってから決まっているだろう」と、口を挟みたくなる。
「始まる前じゃない?」
私は意外な答えに「え?」と、小さい声が出てしまった。
「思ったことを口にすべき」と話した女子大生が嫌そうな表情を浮かべて「チラッ」と、私に視線を送っているのを感じる。
「しまった! 思ったことを口にしてしまった」と、眉間にシワが寄った。
幸い、ヘッドホンをつけてパソコンを開いていたので、画面の向こうに声をかける。

「それはありません」と、あえて女子大生の話の続きに入ってみた。
画面に映っているのはGoogleで検索していた芸能人のゴシップ記事で、もちろんZoomの相手ではない。
「えー? 良い点が取れていますように。ってことは、過去の出来事への願い事じゃない?」
ゴシップ記事ではなく、一度聞いてしまった女の子たちの会話に耳が集中してしまう。
「そうだ! そうだ!」
今度は、口に出さないように心の中で声をあげる。
「あー、確かに今の言い方がよくなかったかも」
「なにそれー」
会話がそこで途切れて、二人は大きな声で笑い出した。
「なにがそんなに面白かったのだろう?」
私は首をかしげると、「若い子たちの話はよくわからない」と思ってしまう。
思いを言葉にしてみる
二人の女子大生の話をこれ以上聞いていても、特に何も得られそうにない気がして、アイスラテを飲み干すと、スタバを後にした。
帰宅後、女の子たちの会話のせいで、終わらなかった作業の続きを始める。
数分後、なんとか出来上がったInstagramに投稿する「スタバの新作紹介」の台本を読み返す。
「バズってくれますように」
女子大生の言うとおり、心に浮かんだ願いを、口に出してみる。

本当に叶うかどうかなんて、わからないけれど。
スタバで買ってきたスコーンを食べながら、動画の制作に移る。
それほど時間をかけずに動画を作り終えると、自分のアカウントに投稿した。
願いと言葉と気持ち
数時間後、アプリをタップする前に「バズってくれていますように」と、口に出してみる。
一応ね、一応。
自分のリール動画の再生回数を確認してみると「56」の二桁が目に入る。
動画をあげる前に口にしても叶わず、動画をあげた後に口にしても叶わなかった。
「まぁ、こんなもんだよね」

大きな笑い声は出なかったが、私は小さく笑ってしまう。
スタバでフラペチーノを飲んで、笑っていた女子大生の姿が思い浮かんだ。
なんだか少しだけ女子大生たちの気持ちが分かったような気がした。
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